きっかけ

きらめく日差し、蝉の声。暑い夏の日。



母の声に、幼い私は慌てて長靴をはき、
軽のバンに乗り込む。

線路を越え、 大通りを渡って
果物畑の中を 白い入道雲が伸びる山にむかって
ぐんぐん登っていくバン。





着いた先はブルーベリー畑。

青い空、碧い山が近く、
夏でもウグイスの声がきこえる
高山村・福井原にある。



真剣に実を摘む母を横目に、
小さな手でカゴを握りしめ、
実を食べるのに忙しい。


口の周りや舌を紫色にして、
沢山実が入った母のカゴを羨む私に

「食べてたら貯まるわけないじゃない」
と母は笑っている。




虫を追ったり、探検している間に、
畑の一角に出来上がるゴザの特製休憩所。

そこには手作りクッキーや
サンドイッチが並んでいて、
暑さにうれしい凍ったゼリーも。

走りまわった子どもが飛び付かないはずはなく、
畑でのおやつは、いつでも 全部 おいしかった。




ひとまわり涼しい風と水、
遠くには北信五岳とアルプスが見える。

風でゆれる樹々の音しかない、ゆっくりの時間。




いろんなことを教えてくたその畑は、もうない。

両親の仕事が忙しくなり、世話する時間がなくなったブルーベリーの畑は藪になっていった。


寂しいけど仕方ない、そう諦めていた。 





そして何年か経った2019年の5月。一本の電話。


「高齢のため福井原のブルーベリー畑を手放そうと思っている。」





引取り手がいなければ更地にすると聞いた時、

心に渦巻いたのは、あの幼い日の夏の思い出。



いまの私には、想いも力もある。 

大切だったあの畑の時間を
今度は自分が作っていけたら。



「私が今、目の前の手を取らなくてどうする。」



そんな想いで畑を引き継ぎ、今に至っています。



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この想いから5年。

たくさんの奇跡に支えられて
なんとか自転車を漕ぎ続けて


「ほらやっぱり大変だったでしょう」
「はい、それはもう。笑」
でもそれ以上に

かけがえのない時間
かけがえのないきもち

Blueberry1st.を始めなければ知り得なかった物事に
たくさん出会えた5年間でした。


5年の節目、2024年5月31日を持ってこのサイトも閉じて、
少し休んでまた次の何かに向かいます。
たくさんの応援とご協力、誠にありがとうございました。